8月に突入して夏本番です。日本では各地で猛暑と集中豪雨が続いていて、激しい夏を迎えています。年中常夏のタイでは、雨季の8月はむしろ暑さが控えめの時期なのかもしれませんが、暑いことには変わりません。
ドリフの番組があった日本の昭和の夏といえば、お化け番組が風物詩でした。「あなたの知らない世界」や宜保愛子さんの幽霊番組がよく流れていたのを思い出します。
タイ人は、お化けの話が大好きです。
バンコクにある心霊スポットとその怪奇現象のエピソードをご紹介しましょう。
「ピンクのカオマンガイ」近くのガス爆発現場のうめき声
サイアムのセントラルワールドやビッグCの前の通りを北へ進むとプラトゥナーム市場の手前で交差点があります。これを右折してペッチャブリー通りへ。すぐ右手に有名な「ピンクのカオマンガイ」の店がある通りです。これを800mほど東側へ進むと高速道路の入口がありますが、その一角にあるエリアを歩いていると、怪奇現象が起こることがあるそうです。
たくさんの人のうめき声が聞こえてくるとか、夜に歩いていたら、脚を何者かにつかまれた感触があり振り向くが誰もいない…。こういった話があるようです。
ここは、「ペッブリー通りガス爆発事件」があった場所です。
1990年の9月24日、2万リットルLPGガスを2タンク満載したタンクローリーが高速道路から下に降りてきました。出口の信号が赤になりかけていたために急いだところ、左折に失敗して横転します。そして破損したタンクからガスが周囲に漏れ、近くの路上の焼き鳥の屋台に引火し爆発。周囲100mは猛火に包まれました。強度不足の違法車両だったそうです。運転手や信号待ちの車のドライバーらは爆発で即死しましたが、道路の向かいにあった大学の女子寮やアパートも大火災になり大勢の女子学生らが焼死、路上には黒焦げの遺体が転がる地獄絵図となりました。火災は24時間も続き、67台の車と51部屋が焼失し、死者88人、けが人36人を出す大惨事でした。爆発の音は数キロ先まで聞こえたそうです。
事故から30年以上経ちますが、上の写真のように高速出口横の焼失した寮の跡地はいまだに空き地のままで、不気味な雰囲気です。犠牲者のご冥福を祈りましょう。
タマサート大学の赤エレベーター
学校の怪談というのは定番ですが、タイの場合は“ガチ”です。バンコクの王宮近くにある名門タマサート大学には、赤く塗られたエレベーターがあり、怪奇現象が起こると話題になっていました。
1973年、クーデターで権力を掌握した陸軍出身のタノーム首相がデモ隊を銃撃した責任をとり辞任・亡命しました。しかし3年後の1976年にタノーム元首相はタイ帰国を強行。反対した若者が殺害される事件があり、抗議した1万人の学生や市民がタマサート大学で集会を開いていました。
そこを国境警備隊や右翼が強襲、エレベーターに逃げ込んだ学生になんと警察が銃を乱射しました。犠牲者は46人ともそれ以上ともいわれます。「血の水曜日事件」と呼ばれています。当時は近隣でベトナム戦争が終結したりラオスやカンボジアの内戦で革命が起きるなどの情勢でタイ当局が神経質になっていたことも影響していました。こうした歴史もあるため、今でも保守的なチュラロンコン大学に対してタマサート大学は革新的な校風だそうです。日本でいう早稲田や同志社みたいな立ち位置でしょうか。
事件後、エレベーターに残った血痕を隠すため、赤い塗料が塗られましたが、エレベーターに乗っていると人の気配がしたり、首を絞められる感触を感じる人が続出。2,3人しか乗っていないのに“重量オーバー”ブザーが鳴るなどの怪奇現象が起きたそうです。
現在は赤エレベーターは撤去されましたが、虐殺事件のモニュメントとして、エレベーターの扉部分が階段の踊り場に保存されています。
怪談話はともかく、事件があったことは歴史的事実であるというのは、おそろしい話です。
サパーンタクシンの“巨大幽霊ビル”
チャオプラヤー川の湖岸のサパーンタクシンに、「幽霊ビル」と呼ばれる不気味な廃墟が建っています。このビルは元は「サトーン・ユニークビル」といって、1990年に着工し、49階建て・600ユニットある高級コンドミニアムとして建設されていましたが1997年に起こった「アジア通貨危機」で工事は中断。施工主が倒産したため、建設はおろか、取り壊しもできないまま、現在に至るまで巨大な廃墟のままになっています。以前は、この廃墟に忍び込んで写真を撮る若者や観光客が多かったそうですが、この中で自殺者が出る事件がありました。それから怪奇現象が起こるようになり、誰もいない廃墟で物音がしたり、人の気配がするのだそうです。自殺事件は2014年に起きたそうですが、スウェーデン人で、43階で首つりだったそうです。エレベータもない43階まで登ったというのもすさまじい精神力です。
現在は完全封鎖され立ち入りができなくなっています。
以上が、バンコクで有名な心霊スポット3か所のエピソードです。
訪問する場合は自己責任でお願い致します。
タイッ娘に、これ以外のこわいスポットを聞いてみてもおもしろいかもしれません。でも風変わりなデートに肝試しを提案しても、タイの女の子は怖がりが多いので、難しいかもしれません・・・。
しかしバンコクの怪談は、ずさんな交通事故や、政治的弾圧事件、不景気による開発停止など、幽霊の怖さよりもタイ社会の闇の怖さの方をを感じさせる特徴があると思います。