「KTV」という言葉を聞いたことがありますか?
バンコクにはゴーゴーバーやカラオケ、スナック、バービアなどいろいろな種類の夜遊びの飲み屋がありますが、KTVとは「カラオケTV」の略称で、中国や台湾、フィリピン、そしてタイなどでおもに中国人客向けにサービスをしているキャバクラのことです。連れ出し制度もあります。
先日、このようなニュースがありました。
バンコクでマッサージパーラーを経営し、政治家になったチューウィット・カモンウィシット氏が、中国人が所有するパブが法定営業時間を超えて午前4時まで営業し店内でドラッグが売買されるなどしていると暴露しました。
そこで管轄のスティサン署が、ラチャダーピセーク通りにあるパブに立ち入り捜査をしましたが、営業時間を遵守しており麻薬も発見されず捜査は空振りに終わりました。情報漏えいがあったのではという噂もあります。
今回は少々アンダーグランドの話になりますが、タイのKTVについてです。
タイのKTVのシステムは?
バンコクには中国人向けのKTVが、ラチャダーピセーク通り近辺、スクンビットのナナエリアなどに多くあります。シーロムにも点在しています。ラチャダーピセーク通りは、MRTラーマ9世駅近くに中国大使館があるので中国人向けの店が多いのです。
システムは完全会員制です。初めてKTVに遊びに行くと会員チケットを購入します。このチケットでボトルが数本もらえますが、費用は3万バーツ~5万バーツ前後かかります。
中国語のカラオケがありますが、中国人はカラオケの音楽も自分のマイクも大音量のボリュームにする習慣があります。しかし店舗のドアを二重扉にするなどの防音の配慮は一切しないので、夜にKTV近くを通ると、人が店のドアを開けて出入りするたびに大音量の歌声が外へ漏れてくるという状況です。
店側としてはお客のボトルを空にして次のチケットを買わせることを目指しますので、女の子達にはお客のボトルを飲み干させることを指示します。中国人客も女の子を泥酔させたいので、どんどん飲ませます。
タイではもちろん違法ですが、華僑系裏コネクションで朝4時ころまで営業している店が多く、明け方まで女の子達に酒を飲ませ続け、吐き続けたり意識朦朧の女の子を連れ出しして、はしご酒をし、そしてホテルで抱くそうです。SMなどきついプレイを好む客も多いそうです。
ハードですね。
KTVの巧妙な裏システムとは
タイにある日本のカラオケの場合は、1970年代以降、タイに進出した日本の大企業の普段の接待や社交の場としてタニヤ通りが整備されたことが発祥のため、元々良い客層を相手にしてきた関係で運営側に暴力団などの反社会勢力は介入できず、タイ資本の店の場合もタイは警察が強いこともありタイマフィアがからむことはできず、まともな店が多かった歴史があります。
しかしKTVの場合は、ほぼ中国マフィアが関係しているようです。
これは、中国人客が出身地(台湾、香港、大陸各地など)で大きく異なるため、いざこざや勢力争いがつきものであることが関係しているようです。タイは昔から中国系移民が多いので華僑が活躍しやすい土壌というのもあるのでしょう。
このため、KTVを辞めた元ホステスの娘に聞いたのですが、裏社会ならではの巧妙なシステムが創られているようです。
若い金持ち風の中国人男がタイの飲み屋やクラブでナンパをするなどしてタイの女の子を勧誘します。その娘を“彼女”のようにして言うことを聞かせるようして、今度はその娘に、他のタイ人の女の子をホステスにならないかと勧誘させます。一般的なバーなどに潜入して他のタイ女性と接点をもちさえすれば「中国人客相手の方がもうかるよ」と簡単に勧誘できるのだそうです。そして集めた女の子をKTVに派遣する形をとります。人材派遣料という形でみかじめをとるので、マフィアが介在する余地が生まれるのです。
上記のように、中国人客相手の飲み・ペイバーはハードで女の子は“消耗品”なので常に新人が必要です。店では厳しいノルマと罰金があるので、ほぼ最初の約束されていた給料は支払われないそうです。その場合、最初の勧誘役の女性も“連帯責任”になるそうで、だから厳しく管理されるそうです。
話をしてくれた元KTV嬢は、管理者の女性(タイ人)のことを恨んでいました。要するにタイ人同士がぶつかるように仕組んでいて、経営側の中国人に矛先が向かないようにしているのです。えげつないです。
店で使い物にならなくなった場合は、「海外に仕事があるよ」と言ってマッサージ師として台湾や中国大陸などに派遣し、パスポートを取り上げタコ部屋のようなところに軟禁して売春させるコースもあるとか。現地の受け入れ先は系列マフィアであることはいうまでもありません。
そうした悪徳ホスト役の中国人男は香港マフィアだそうで、理由はネイティブの英語使いだからです。このため、ファラン向けのゴーゴーバー嬢や米タイハーフなどの英語ができる女の子を集中的に狙い撃ちして、中国人向けのビジネスに鞍替えさせていくのです。もちろん同時進行で複数の“彼女”がいるわけで、用済みになれば理由を作って中国へ帰り連絡を絶つそうです。
そうしタイ人の女の子に勧誘役・管理役をやらせることで、通訳を兼ねると同時に、トラブルや当局の人身売買捜査から組織を防ぐという仕組みになっているわけです。これがタイのKTVの裏のシステムです。
現在は、中国本土でコロナ感染者が多いためタイへ入国する中国人は以前より少ないですが、今後また増えていくことでしょう。もちろん優しい中国の富裕層のお客さんとの出逢いがある娘もいないことはないでしょうから、タイの女性にとってKTVが一概にどうといえることではないかもしれません。
でも、日本人として中国には負けてられないという思いは別にしても、タイの女の子が中国のもうけ話に引きずられて、かわいそうな結果を迎えないために、「日本人相手のつきあいの方が、安心」と思ってもらえるように、出逢うタイの人には優しくしてあげたり、日本の魅力を伝えたいものです。