タイの正月であるソンクラン中は、毎年、飲酒運転による事故が多発します。
以前からタイではソンクラン前後を「危険な7日間」と呼ばれており、コロナ前にさいごに行われた2019年ソンクランではこの7日間で386人が事故死しています。
タイ当局も、昔から道路に看板を出してドライバーに「酒を飲んだらスピードを落とそう」と呼びかけていますが、効果がありません・・・・。
あまりに事故が多いので、例年、この期間は各病院で輸血の血が不足するそうで、怖い話です。事故といえば、救急車の出番ですが、タイの救急車は日本とは色々な部分が異なっています。
タイの救急車についてみてみましょう。
タイで救急車を呼ぶ方法
日本では119番に電話して消防署に火事か救急かを告げます。
タイでは1669番にかけます。これはタイ国立救急医療センターの番号です。英語なら通じます。
ここに電話すると最寄の救急病院に接続されます。そこで事故や病気など内容を聞かれ、そして救急車が手配されるという仕組みです。
あるいはサミティベート病院やバムルンラード病院など大手私立病院も救急車をいくつか所有しているので、これらの私立病院に電話して直接頼む方法もあります。行きたい病院が決まっている場合は、病院に電話しましょう。
タイの救急車は有料。いくら?
救急車の多くは基本的に国立救急医療センターや病院から派遣されてくるのではなく、民間業者の車がやってきます。救急車の利用は民間・病院の両方とも有料サービスです。距離などによりますが、費用は1,000~3,000バーツくらいです。やっかいなことに海外旅行保険も、会社で入っている海外療養費制度(ヘルスケア)も基本的にタイの救急車は保険対象外です。なぜなら、日本では救急車は無料なのでそもそも保険制度が網羅していないからです。(この穴を埋めるべく一部企業は会社が持ってくれる形で保証される場合もあるそうです)
交通事故や、脳梗塞や心臓発作といった緊急時なら仕方ないですが、なるべく使いたくないですね。
タイでは、国立救急医療センターができてから十年くらいしかたっていなく、それまでは救急車は、いくつかある慈善団体などの民間団体が運営していました。現在でも、国立救急医療センターや県が所有する公的な救急車は数がとても少ないので、民間団体の救急車や病院の所有車がメインなのです。有名なのは「華僑報徳善堂」という団体です。
これは華僑系タイ人が設立したボランティア団体で、寄付金で運営されています。歴史は古く1910年から活動を始めました。貧困層などの遺体を引き取り埋葬するという活動を行っていたそうです。
救急隊員は族あがりのヤンキー!?
タイでは、ボランティアは仏教的な価値観であるタンブン(功徳)の精神で行われています。
その考え方のひとつとして、お金持ちは財産を提供し、貧しい人は体を提供する、というものがあります。だから救急ボランティア団体にいる隊員は貧しい家庭出身の若者が多いです。しかも、日本でいう暴走族あがりみたいな若者が、親や地域の人から「悪さばかりしてきたんだから少しは良いことをしてこい!」といって送りこまれてくるのだそうです。
隊員たちは応急処置の講習を受けていて、人助け精神に満ち溢れてはいますが、もとは血気盛んなヤンキーあがりが多いので、威勢が良いです。先に述べたように、救急車は有料サービスですので、他の団体と競争があります。
だから、交通事故などでケガ人が倒れているところに、複数の団体の救急車が来てかちあってしまうと、ヤンキーあがりの隊員同士ですから殴りあいのケンカが始まり、どっちがケガ人を搬送するかで抗争が勃発するのだとか。
もちろん全員ではないですが、タイでは救急隊員とは揉めない方がよさそうです。
タイの救急車のサイレンが大きすぎるわけ
救急車にケガ人や病人が乗せられると、出発です。
しかしタイでは、緊急車両に道を譲るという規則が以前はなかったため、救急車といえどもなかなかすんなり道を進めません。タイの道路は渋滞が多いです。
しかも、周りは改造マフラーのバイクや整備不良で黒い煙を吐くトラックやソンテウばかり走っていてとてもうるさい道路です。
このため、聴いたことがあると思いますが、とんでもない大音量のサイレンを鳴らしてタイの救急車は走り、周りの車を追い立てて、ケガ人や病人を運ぶのです。
以上が、タイの救急車事情です。
やはり・・・タイで救急車に乗るような事態は避けたいですね。交通事故や急な発病をしないように、普段から気をつけたいものです。