
バンコクのカラオケスナック&ホルモン焼「アイーン」です。PM2.5でのバンコクのBTSやMRTの無料開放は、期間が延長されるという政府高官の発言がありましたがどうなるのでしょうか。1週間で実際にバンコクの交通量が減ったという効果があったそうです。
PM2.5の大気汚染は深刻なようで、近年、タイでは呼吸器系の病気が多くなっているそうです。
気になって調べてみたのが、タイ人の死因についてです。WHOの調査データがあるので、みてみましょう。
近年のタイ人の死因はなに?
現在のタイでの死亡原因のワーストワンは下気道の感染症です。これはCovid-19なども含むので近年の状況からいって、まあ当然と思われます。これが、コロナがなかった場合はどうなるのでしょうか。
今から約10年前のタイ人の死因のナンバーワンは、脳梗塞・脳出血でした。現在でも第2位になっていますので、コロナがない場合の実質1位です。
タイ人の食生活はかなり健康に悪い影響があるという話は以前から言われていて、脂っこいものや糖分が多い物を好んで食べるため、歳をとるといろいろな病気を引き起こしています。
タイっ娘に聞いても、「おじいちゃん(あるいはお父さん)が倒れて田舎で寝たきりで…」なんていうことをいう娘も珍しくなく、よくない生活習慣の蓄積による脳卒中で倒れたり亡くなる人は身近に多いようです。
ミスターコンドームの大活躍
では20年前のタイ人の死因は何だと思いますか?
90年代から2000年代初頭にかけて、という時期でピンとくる方は、近代の東南アジア史に明るい人、あるいは夜遊び猛者かもしれません。
今から20年前、タイ人の命を一番奪っていたのは、エイズです。
80年代後半からタイではエイズが流行し始めました。
当時は、貧しい北部やイサーン(東北)などの農村や山岳地帯の女性らがバンコクに送り込まれて性風俗店で働くということが今よりも盛んに行われており、まだ法律での制限がなかったため十代前半からゴーゴーバーやカラオケで働く女の子も珍しくなかったそうです。当時を知る世代の飲み屋のママによると「あのころは田舎の先輩が15歳で客の子を妊娠したって言ってたよ。そんな時代だったのよ」などという衝撃の証言をしていました。特に少女売春が盛んだった北部のチェンマイを表して、当時「チェンマイの春」という言葉があったくらいです。
このため次々に田舎出身の未成年の少女らが夜の街でエイズに感染していきました。
また、覚せい剤も蔓延していたため注射器の使いまわしも行われており、寺で行われる宗教的な入れ墨でも不衛生なタトゥ―針が多く使われていたため、これらもタイでのエイズ感染の拡大に大きな影響を与えていたのです。
ついには90年代、タイは世界で一番エイズ患者が多い国として知られるようになりました。これをうけて「ミスター・コンドーム」としてタイで有名なジャーナリスト・政治家のメチャイ・ビラバイダヤ氏がコンドームキャンペーンを展開し、マッサージパーラーなどの性風俗店からタクシーに至るまで無料でコンドームをばらまき、中学校での教育にも取り入れるなどして啓蒙活動を大々的に行いました。これによりタイでのエイズ感染は2000年代以降は減っていきました。
タイには“交通事故グラビア”があった!
ではエイズの前、30年前のタイの死亡率ワーストワンは何だったのでしょうか?
それは、交通事故でした。
今でも、タイの交通マナーの悪さはよく指摘されますが、以前はもっとひどかったそうです。
検問はほとんどなく、無免許運転も当たり前のように行われていてドライバーの意識が低いため、事故が多発していました。以前は正月などには田舎の幹線道路沿いに「酒を飲んだらスピードを落とそう」と看板が出て話題になったくらいです。
当時のタイ名物といえば、新聞雑誌での交通事故の“グラビア”だったそうです。
日本ではコンプライアンス全盛の今に比べて「昭和はなんでもありだった」などと言われますが、90年代以前のタイも同じで、いろいろな規制が緩すぎたそうです。そのひとつが、当時流行していた“交通事故グラビア”です。交通事故で亡くなった遺体写真を新聞や雑誌が載せることが普通だったそうですが、悪趣味なことにその過激さを競うようになっていたそうで、“こんなにぐちゃぐちゃになりました”というような写真を載せて、販売部数を稼いでいたというから驚きです。
今ではタイの事故現場では、遺体を布で隠したり、ネットニュースで写真には必ずモザイクをいれています。でもよく考えてみれば、モザイクをかけていたとしても今の日本ではそういう映像はメディアは公表しないものです。昭和中期ころまでの日本でも遺体がTVで映っていた時代があったわけですが、タイでは以前の「交通事故グラビア」時代の名残が残っているのかもしれません。
以上が、現在、10年前、20年前、30年前のタイ人のポピュラーな死因についてです。
自動車が急速に普及したが意識が追い付かず増えた交通事故、未成年売春や覚せい剤によるエイズ、飽食化での不健康な食生活での脳疾患、そしてコロナ、と、死因はタイの現代史を色濃く表すようで興味深いです。