一年の計は元旦にあり、といいますが、今年は職場のタイ人スタッフとどう仕事を進めていこうかな、と考えている方もおられると思います。タイで昔から人気がある「クーカム」という日本兵とタイ女性の物語があります。これがタイ人とのつきあいを考える上で参考になる話なのです。「クーカム」の世界についてみてみましょう。
タイ女性と日本兵の悲恋物語「クーカム」とは
「คู่กรรม クーカム」(運命の人)は女性作家トムヤンティの「メナムの残照」という小説が原作です。タイで猛烈な人気を誇り、十回近くもドラマ・映画化されています。このドラマはその時代の人気トップ俳優が演じることが定番だそうです。1990年版のTVドラマでは、放送時間にバンコクの道路から車やバイクが消えて渋滞がなくなったというすさまじい視聴率だったそうです。
▲1988年映画版ポスター
タイ人はもちろん、滞在歴の長い日本人の間でも有名すぎる作品で「いまさら」と感じる人もいるかもしれませんが、さいごに映画・ドラマ化されたのは2013年なので、最近のタイの若者や、タイに赴任して時間の経っていない方には知らない人もいると思います。
簡単なあらすじをお話しします。画像は2013年TVドラマ版からの引用です。
第二次世界大戦中、イギリス領のシンガポールを攻略するため日本軍がタイに進駐してきました。有力者の娘であるアンスマーリンには恋人がいましたがイギリス留学中に戦争が始まり、帰国できなくなっていました。
タイに来た日本軍は横暴なふるまいをしていたため、アンスマーリンは抗議をします。日本海軍の小堀大尉は部下の非礼を詫び、タイの人たちとの友好を深めようと、規則を破って軍医をタイ人の病人のところへ派遣するなど努力します。そして芯の強いアンスマーリンに好意を抱きます。しかしアンスマーリンは彼のことが気になりつつも拒否し続けます。タイ軍の要人であるアンスマーリンの父は、日本との関係強化が一族、そしてタイを救う道だと考え、娘を小堀大尉と結婚させようとします。アンスマーリンは気が進みませんでしたが、家族を守るため結婚を承諾しました。一緒に暮らすうち、考え方の違いで衝突しつつもアンスマーリンは小堀の誠実さに惹かれていくようになります。しかし、戦況が悪化していき二人の運命は・・・というお話です。
タイ人の感じる日本人のイメージとは
この物語は大人気で、一時期、タイ人は日本人男性を見かけるとみんな「コボリ」「コボリ」と呼んでいたそうです。
アンスマーリンはなんども小堀大尉と衝突します。「気に食わない男とけんかばかりするうちに好きになる」は、昔の少女漫画のパターンかよと感じるかもしれませんが、不思議と「クーカム」は、都合の良い作り物のようには感じないのです。
それは、タイ人と日本人の間で起きがちな衝突やすれちがいに、タイ人も日本人も、それぞれ思い当たるところが多いからでしょう。つまりアンスマーリンと小堀大尉の関係は、強大な経済や技術を誇る日本へ従わざるを得ないという関係性からスタートし、つきあううちに気が合うところも発見していき、日本文化が広く人気を得ている現代のタイの状況と似ているということです。
そして同時に、タイの人の「日本は好きだけど我々タイ人とは絶対的に違う価値観もあるよね」という感覚も、ドラマを観ていると伝わってくるのです。
現代の日タイ関係のヒント
ですので、昔の日本軍人とアンスマーリンという関係だけでなく、現在タイにある日系企業の駐在員とタイ人従業員との関係、日本人とタイ人との恋愛や友情、といったことへのヒントになる話だと思います。
現代の我々はどうタイの人たちとつきあっていくのか。機会があれば「クーカム」、観てみてください。
▲2013年TVドラマ版の主題歌PV
今年はどんな年になるでしょうか。今年のタイの人たちとの交流に思いをはせながら、タイっ娘と今年の飲み始めをしたり、新年会をしてみてはいかがでしょうか。